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小児の中耳炎

小児の中耳炎|桂川みずた耳鼻咽喉科|京都市西京区桂川街道沿い

小児の急性中耳炎

otitis media in children

小児の中耳炎

小児の中耳炎

3歳までに50~70%の乳幼児が中耳炎に一度はかかるといわれているほど、中耳炎は小児においては頻度の高い病気です。
乳幼児期の子どもの場合は、耳に異常があることを周囲にうまく伝えられないので、保護者の方が耳の様子に気をつけてあげる必要があります。

中耳炎の原因

小児の中耳炎の多くは、風邪などにより鼻やのどで細菌やウイルスが増殖した後に生じます。
鼻の奥と中耳は耳管という管で通じており、風邪などで増殖した病原体が耳管を通じて中耳内へと侵入し、そこで感染を起こし中耳炎が生します。
小児においてはこの耳管が大人よりも太短くなだらかであり、鼻やのどの病原体が耳管を通じて中耳へと侵入しやすいため、小児では中耳炎の頻度が高いと考えられています。
炎症を引き起こす病原体としては細菌が多く、肺炎球菌、インフルエンザ菌、黄色ブドウ球菌、モラキセラ・カタラーリスなどがあげられます。

小児は免疫力が低いのに、保育園や幼稚園などでお互い触れ合う機会も多く、唾液や鼻汁を介して細菌やウイルスに感染しやすい環境にあります。そのため、風邪をひくことも多くなります。
結果として保育園児や幼稚園児は中耳炎の頻度が高くなります。また、治る過程で滲出性中耳炎に移行することも少なくありません。

中耳炎の症状

大人の場合は耳の痛みや聞こえにくさ、耳がつまった感じが生じますが、小さなお子さんでは症状の訴えが少ないため、頻繁に耳に手を当てる仕草があるときなどは中耳炎を疑う必要があります。
また炎症が強く鼓室内に膿が多く貯留した場合、鼓膜が破けると耳だれ(耳漏)が生じます。

中耳炎の診断・検査

鼓膜を確認し、鼓膜の色や鼓室内の膿の有無、鼓膜穿孔の有無などを観察します。また中耳炎を引き起こしている原因菌を調べ、有効な抗生剤の選択を行うため細菌培養検査を行う場合があります。
耳だれがある場合には耳だれを採取して培養検査を行いますが、中耳炎の原因となる細菌は耳管を通して鼻から中耳に行くため、耳だれがない場合には鼻から細菌培養検査を行う場合もあります。

中耳炎の治療

原因の多くは細菌であるため、抗生剤の投与を内服や点耳にて用います。
近年、小児の中耳炎において抗生剤が無効な耐性菌が原因となるケースの増加が報告されています。
治療を行っても改善しない難治性中耳炎の場合には、細菌培養検査を行い、その結果に基づいた抗生剤の選択をしたり、培養検査が困難な場合にはガイドラインに基づき抗生剤の再選択を行います。
なお、抗生剤の使用が多くなると薬剤耐性菌出現の頻度が増えるため、自然治癒が見込まれる軽度の中耳炎には抗生剤を使用せずに治療する場合もあります。

鼓膜切開

耳の痛みなどの症状が強い場合や高熱が持続する場合、抗生剤の効果が乏しい場合には鼓膜を切開することがあります。
鼓膜を切開し、膿を除去することで中耳内の病原体の量を減少させ、炎症を早期に抑えることができます。
切開した鼓膜は、中耳炎が改善すると多くの場合数日で閉鎖します。

中耳炎の反復

小児の中耳炎は反復する場合があり、①単純性の急性中耳炎をきたし治療により完治するものの再度急性中耳炎を反復すタイプと、②滲出性中耳炎(後述あり)がベースにあり風邪をきっかけに急性中耳炎を反復するタイプがあります。また1歳未満で急性中耳炎にかかるとその後反復しやすいことも報告されています。

免疫機能が未熟な低年齢からの集団保育においては風邪の原因ウイルスや細菌の伝播の可能性が高くなり、急性中耳炎のリスクは高くなります。
また家族からの受動喫煙も急性中耳炎のリスクを高めることが報告されています。

多くの場合、鼻・のどの感染により鼻の奥(上咽頭)で増殖した細菌が中耳炎の原因であるため、鼻水が多い場合は鼻水を吸い取ることで中耳炎リスクが下がる可能性が考えられます。
鼻水の粘り気が強い場合や鼻の粘膜の腫れが強い場合には自宅の吸引器では取りきれないことが多いため、その際は鼻処置のための受診をお勧めします。

小児の滲出性中耳炎

otitis media in children

滲出性中耳炎とは

滲出性中耳炎とは

滲出性中耳炎とは、痛みや発熱といった急性感染症の症状がないのに、鼓室内(鼓膜の奥の空間、中耳)に液が貯留している状態です。痛みを伴う急性中耳炎とは異なります。

滲出性中耳炎の原因

鼓膜の奥の空間である鼓室は鼻の奥と耳管という管で通じていますが、この耳管は通常時は閉鎖しています。
このため外耳道との境界である鼓膜に穴が開いていない場合、鼓室は閉鎖空間になっています。
そして、唾を飲み込むことなどによりこの耳管は開き、この耳管を介して鼓室は定期的に換気されています。

中耳炎や鼻炎など耳管周囲の感染・炎症が生じた場合、耳管を介した換気が困難となります。
この場合鼓室の中は換気されず陰圧となり、血管から水分が引き出されて鼓室内に貯留し、滲出性中耳炎となります。
とくに乳幼児では耳管周囲の構造が未熟であるため耳管を介した換気ができず滲出性中耳炎をきたしやすくなります。
また小児の場合鼻の奥にアデノイドという組織が肥大しており(小学生以降に自然縮小します)、このアデノイドが耳管を介した鼓室の換気を妨げ、滲出性中耳炎の原因となっていることがあります。

滲出性中耳炎の症状

鼓室内の貯留液のため鼓膜の動きが制限され、耳のつまった感じや聞こえにくさを生じます。強い炎症はないため痛みはありません。
小さなお子さんの場合症状の訴えがないため、多くの場合耳の中を観察しないと滲出性中耳炎の有無を判断できません。

滲出性中耳炎の診断

鼓膜を観察し、鼓室内に液が貯留しているかを調べます。またティンパノグラムという検査により鼓膜の動きを確認します。

滲出性中耳炎の治療

耳管周囲の炎症をとる治療を行います。多くの場合鼻炎が原因となっているため炎症を鎮め、鼓室内の貯留液の排出を促す薬の内服を行い、鼻水の吸引などの処置を行います。
滲出性中耳炎から急性中耳炎に移行する場合には抗生剤の投与も行います。
また鼻から鼓室への換気を促すものとして、オトヴェントという自己通気器具もおすすめしています。
4歳以上であれば多くの場合行うことが可能です。

しかしながら、このような治療によってもすぐに改善しないことも多いです。
両側の滲出性中耳炎が長期に持続する場合、言葉の発達や学習に支障をきたす可能性があります。
このため3か月以上両側の滲出性中耳炎が持続する場合には、鼓膜を切開し貯留液を除去し、さらに鼓膜切開部にチューブを挿入するという手術を検討します。
大人の方であれば外来で局所麻酔下に行えますが、小さなお子さんは局所麻酔では動いてしまうため行えません。連携病院に紹介し、全身麻酔下にチューブを留置します。